2022.03.20
林樹里の作品について

自然の生み出す模様には人為を超えた美しさがある。“かげ”の探求は2015年に始まる。実体から影が伸びる様子を描いたことに始まり、地面に散った木の葉や花びらがその影と混在する様子を描き、遂には地面に落ちる影のみを表すに至った。そして、その影も次第に具体的な形をもたずに描くようになってきた。それは一層簡潔に“かげ”について表したいからだ。強靭な麻紙に岩絵具や胡粉で凹凸ある地面を描いたものと、透けるほど薄い美濃紙に影だけを描いたものを用意し、伝統的な表具技術を用いて二枚を重ね合わせる。まさに、地面に影を落とすことを行う。重ねた和紙が織り成すマチエールが幻想的な奥行きを生み出してくれる。・・・・・・「林樹里個展2020」の冊子部分より